Tracy Tayama

トレイシー・タヤマ
トレイシーが描くのは、喜びやあたたかな記憶、暮らしの中にある小さな幸せです。大切な人と過ごした時間や食べもの、何気ない日常の風景を、インクペンと水彩で丁寧にすくい取りながら、カリフォルニアとハワイを行き来して制作を続けています。
二人の子どもを育てながら、セラピストとしての道を歩もうとしていた彼女は、パンデミックをきっかけに大きな転機を迎えました。先の見えない日々の中でペンを取ったことをきっかけに、描くことが再び喜びとしてよみがえり、日常の中で欠かせない時間となっていきます。
また彼女のルーツには、日本からハワイへ渡った日系移民である祖父母の存在があります。プランテーションで働いていた家族の記憶は、彼女の感性の中に静かに受け継がれ、どこか懐かしさを感じさせる日本とハワイの文化の融合として作品に現れています。そのため彼女は、ハワイらしさがよく表れる食べものをモチーフに描くことが多くあります。
耐水性インクとカリグラフィーペン、水彩絵具を用いた制作は、「今、この瞬間」に静かに向き合う時間でもあります。作品をあえて日常の空間に置き、暮らしの中で生まれる感覚から最後の一筆を導くなど、プロセスそのものを大切にしています。
トレイシーにとって制作とは、一日を丁寧に生きるための習慣であり、やがて完成した作品が誰かの心にそっと寄り添うことを願う行為でもあります。






